男がベランダでタバコを吸う様子をレースのカーテン越しに眺めていた。

 湿った布団に横たわり、事を終えても尚私は下腹部に男の感触をありありと感じていた。体の一部とは言えどここに本当に彼が入っていたのだな、と処女を喪失したばかりの娘のようなことを考える。

 開け放たれたベランダの窓から、湿り気を帯びた生ぬるい風とともに微かなセブンスターの匂いが流れんこんでくる。どこかで救急車のサイレンが通り過ぎ、ベランダの下の駐車場からは子供が奇声をあげながら走り回っている様子が聞こえてきた。窓の外に見える陽は既に山間に隠れそうなほど傾き、空を薄紫色に染めていた。

 起き上がろうとするがうまく脚に力が入らない。布団の周りに無造作に散らばった男のパンツやら靴下やら自分のブラジャーやらを這うようにしてかきあつめ、洗面所に向かった。汗に濡れた二人の下着と洗濯籠に溢れんばかりに積み上げられた衣類をいっしょくたに洗濯機へ放り込み、目分量で粉洗剤をふりかける。スイッチをいれると洗濯槽へ勢いよく水が放出され、その流水音で自分が尿意を感じていたことに気が付いた。