青空

 新聞屋のバイクのエンジン音で目が覚めた。下腹部に乾いた痛みが走る。酷い倦怠感で起き上がるのが億劫だが、男が目覚める前に部屋を出たかった。由美子は無数に転がるビールの空き缶を縫って洗面所に向かった。一歩歩くたびに、足の裏に何かがねとりと纏わりつくような感覚がある。カーテンの隙間から差し込む朝陽に照らされて埃が舞うのが見える。何をどうすればこんな不衛生な部屋が仕上がるのだろうか。しかしその不衛生さに腹が立つこともなかった。駅のトイレに大便が流されず放置されていたとして、その汚さは私には関係のないことだ。どうせ一度自宅に帰るのだ、水だけで顔を洗い手ぐしで髪をとかす。尿意があったが一刻も早く部屋をあとにしたかったし、何よりこんな汚いところで用を足したくない。汚い。とにかく汚い。セーラー服を頭から被り、乱雑に並べた化粧品をポーチにしまう。毛むくじゃらの腕を布団から投げ出して眠り続けている男をそのままに、ひったくるように鞄を手に取り玄関に向かう。ローファーに裸足をすべりこませ、音を立てないよう細心の注意を払いながらドアを開けて部屋を出た。昨日と同じ下着を身に付けている不快感とは裏腹に、外は乱暴なまでに雲一つない青空だった。